「食卓一期一会」長田弘

今週のお題「今、読みたい本」

食卓一期一会

食卓一期一会

1987年から手元にあるので27年も手元にある本。
勧めてくれたのは学部の違う同級生。
彼は今も元気なのだろうか。

この詩集をよく読むようになったのは、
再婚して次男を産み、
子宮がんを患って手術をし、
要約筆記をはじめて、
次男の育児に行き詰まりを感じ、
食事の用意が少しずつしんどくなってきてからです。

この本を読むと
「さてご飯をつくろうか」となります。

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昨年アスペルガー症候群と診断された次男は
耳がよく、計算も速く、言葉と文字が大好きです。

記憶力も良いですが、
本人によると記憶が残りすぎて辛いそうです。

興味ある掲示物があればそこから離れられません。

初対面の人には人なつこく良い子ですが、
その関係は長く続きません。

次男は普通に言葉は通じているようで
次男自身は全然理解してなくて
身支度もいまだに一人ではできません。

発信はできるけれど受信感度の悪いコンピュータみたいな次男です。

気がかりなのは衝動性があり、自傷行動になることです。
目の怪我、その他の怪我も数回。

学用品の整理もムリ、靴は左右逆、
服は後ろ前(ひっくり返しのこともあり)に着ても平気です。

太めでお腹がぽこんとでているので
パンツがでてしまっても平気。

ずり下がらないベルトもしていましたが、
締め付けられるのが嫌とはずしてしまいます。

思いのままに行動する次男を
私だけでは受け止めきれないため
夫、長男、担任や支援学級、
学童保育の先生には
たいへんお世話になっています。

次男は本当によく話します。
自分の目に入った風景や音を全て言葉にして
それを誰でも良いから聞いて欲しい次男。

でもそう思い通りにはいきません。

夫、長男、私の言葉に反応して、
次男独自のこだわりが強くなるので
私はなにげない会話をしないようにし
自分の元気が無くなってきたとき、
朝や夕方に一人で小さい声で
この本を読んでいると少しだけ元気になれます。

次男のやる気を引き出すのは多くの言葉かけではなく、
次男の声を心から聴く姿勢と次男を認める言葉だと最近感じます。

私のできることは食事をおいしくつくることです。

「食卓一期一会」で1番好きなのは「言葉のダシのとりかた」
これを小さい声で読むのが好きです。

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(食卓一期一会 長田弘著 p14ページよりp16)

言葉のダシのとりかた

かつおぶしじゃない。
まず言葉をえらぶ。
太くてよく乾いた言葉をえらぶ。
はじめに言葉の表面の
カビをたわしでさっぱりと落とす。
血合いの黒い部分から、
言葉を正しく削ってゆく。
言葉が透きとおってくるまで削る。
つぎに意味をえらぶ。
厚みのある意味をえらぶ。
鍋に水を入れて強火にかけて、
意味をゆっくりと沈める。
意味が浮き上がらせないようにして、
沸騰寸前サッと掬いとる。
それから削った言葉を入れる。
言葉が鍋の中で踊りだし、
言葉のアクがぶくぶく浮いてきたら
掬ってすくって捨てる。
鍋が言葉もろともワッと沸きあがってきたら、
火を止めて、あとは
黙って言葉を漉しとるのだ。
言葉の澄んだ奥行きだけがのこるだろう。
それが言葉の一番ダシだ。
言葉の本当の意味だ。
だが、まちがってはいけない。
他人の言葉はダシにはつかえない。
いつでも自分の言葉をつかわねばならない。